ホワイトカラー・エグゼプションに思う

611日政府は、働いた時間ではなく成果に応じて給与を払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、対象者の年収基準を「少なくとも1000万円以上」とすることを決定。月末にまとめる成長戦略に明記する。職種は金融のディーラーなど「職務の範囲が明確で、高い能力を持つ労働者」と記す。(中略)政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で、具体的な金額など仕組みを詰める。2015年の通常国会に労働基準法の改正案を出し、16年春の施行を目指す。政府が新たに導入するのは、1日8時間、週40時間という労働時間の規制を外す仕組み。長く働いても残業代や深夜・休日手当が出ないため、仕事を効率的にすませる効果が期待。

日本では課長以上の管理職はもともと労働時間規制を外しているが、それ以外の社員を対象から外すのは初めてとなる。(以上日経新聞抜粋)

 ホワイトカラー・エグゼプションとは、管理職や専門職のほか、裁量労働に従事する者を含むホワイトカラーなど一定の類型の業務に従事する従業員に対し、役職手当などを付与することによって、労働時間の規制を適用除外とする制度です。米国において、「公正労働基準法」(FLSA : The Fair Labor Standards Act)の規定第6条及び7条の適用除外(エグゼンプション)になっていることが語源とのことですが、読者の皆さんは該当しますでしょうか?

私は、30代で初めて転職してから、約15年間はフルコミッションであったり、役員であったり、または社内で初の専門職(まさに、この制度に該当しますね)と時間という枠の無い世界で仕事をした経験があります。何を持って専門とみなすかは、資格ではなく、その組織内における特異性や専門性を会社側で判断しており、私も同意して働いておりました。

知的労働においては、すでに21世紀に入って以降は成果報酬または専門性への対価として、存在しているように思います。今回の制度は、ある意味ではそういった制度が定着していない大手企業などに対し、働きかけでもあると思います。

 「残業がつかないのはフェアでない」とか、「判断基準は誰が持ち、チェック機能は何処が担うのか?」など思われるかもしれません。一方企業においては、「短時間で結果が出せるような超優秀社員の処遇」も、制度化する必要があると考えるべきでしょう。

流動性の時代には、労働時間だけでなく働き方も柔軟性が求められており、それは世界的な傾向で「ノマドスタイル」、「フリーエージェント」、「フリーランス」といった言葉でわかるように、必然的な現象であると考えるべきでしょう。

ではこの制度を、労働者である個人はどうとらえればいいのかについても次回考えてみたいと思います。

 

<用語>

「ノマドスタイル」・・・「オフィスのない会社」「働く場所を自由に選択する会社員」 といったワークスタイル。 満員電車や残業から開放され、自分の時間を増やす豊かな 働き方として注目されている。

「フリーエージェント (free agent)」 ・・・組織に雇われない働き方をする人々である。主にインターネットを使って自宅で働き、アメリカでは労働人口の四分の一がこの働き方を選んでいる。Daniel Pink(2001)の邦訳である『フリーエージェント社会の到来』(ダイヤモンド社)が有名。

「フリーランス(freelance)」・・・中世ヨーロッパで、主君を持たず自由契約によって諸侯に雇われた騎士。傭兵が語源。特定の企業や団体、組織に専従しておらず、自らの 才覚や技能を提供することにより社会的に独立した個人事業主もしくは個人企業法人で ある。企業から請け負った業務を実際に遂行する本人をフリーランサーと呼ぶ。

Life Management Lab. All Rights Reserved.