21世紀のキャリアデザイン

今の日本にどれくらい「年功序列」は存在しているのだろうか?

 

パナソニックは29日、約10年ぶりに人事・賃金制度を見直すと発表。長期雇用を重視し処遇にあまり差をつけない「日本型雇用」を維持してきたが、賃金の年功要素の原則廃止に踏み切るとのこと。実績主義に徹するということか?

一方、資格ビジネスは活況のよう。日本経済新聞社・日経HRの共同で、「ビジネスパーソンを対象に新たに取得したい資格(語学検定含む)」を調査。企業活動のグローバル化が進んでいるのを映し、首位は英語能力テスト「TOEIC」の最上位であるAレベル(860点以上)。宅地建物取引主任者(宅建)など仕事に生かしやすい資格が人気。また、今後取得したい資格について「勉強したい、勉強を始めている分野がある」と回答したのは86.2%。資格取得の目的では「自分の知識・スキルの客観的な証明になるから」(37.9%)、「将来のキャリアアップのため」(29.3%)、「体系的な知識やスキルが身につくから」(14.4%)。

首位になったTOEICのAレベルは具体的に取得したい資格(複数回答)の中で、19.3%を占めた。TOEICは2位にBレベル(730860点未満)、3位でもCレベル(470730点未満)が入り、トップ3を独占。4位の宅建は不動産、金融関連で働くビジネスパーソンの間で取得意欲が高い。企業の財務部門などでの業務に必要な日商簿記検定2級(5位)、も人気。

独立・開業に強い「士業」では、6位「中小企業診断士」、7位「社会保険労務士」、10位「行政書士」の3つがランクイン。しかし、最近はこの3つの資格でも食べていくことは難しいと聞く。資格で食べていける時代は終わったといえるのではないか

逆に「勉強したくない・勉強していない」と答えた人に理由を聞いたところ、「勉強する時間がないため」が40%。しかし、これは理由にならない。

ただ、資格を取得した場合の評価や処遇については「ない」との回答が7割。金融やメーカーなど一部では昇格要件に資格取得を設ける企業もあるが、全体では資格取得を直接人事評価などに結びつけていないようだ。

 

 いかがでしょうか?

視点を変えて、保有資格の満足度では、情報処理技術者試験の最難関資格である「プロジェクトマネージャ」が首位だった。業務への活用度や将来性の高さが満足度を高めている。2位にはビジネス実務法務検定2級、3位には秘書技能検定2級が入った。いずれも費用と時間の両面で負担が少ない点が満足度を高めた。活用度の高さでは税理士が、将来性の高さでは日商簿記1級がそれぞれトップだった。これは納得。

 

これはあくまでも日本国内に限っての話。世界競争が今後も激しくなる中で、自分の付加価値を高めることは容易ではない。資格は武器の一つに過ぎないということ。

一方、企業側が求めているのは、ずばり結果の出せる人材ではないか。営業であれば、同じ年数のキャリアの営業の2倍の成果がだせるかどうか?特に、新規開拓に長けた営業マンの価値は高いように思う。企画であれば、新しい顧客を創造できる人材。人事であれば、付加価値の高い人材を人材紹介会社に頼らなくても独自に発掘できる人材。

これら全てに共通しているのは、自立型人材で組織風土を変革できるような人材の価値は貴重だということ。

しかし、これは同じ環境で働くだけでは難しいのも現実。以前、慶応大学の高橋俊介氏(※)が著書「キャリアショック」の中で、計画性だけでは本当のキャリアは築けないと述べておられた。

これからのキャリアデザインは独自の視点でそれぞれのステージでどこまでキャリアリスクをとれるかにかかっている。これは過去25年で会社員として、様々な業界を渡り歩いた人間として断言したい。若いころからどれだけリスクを取ってきたかが、人生の後半の自分自身の付加価値に大きく関係する。朝活がブームだが、新たな人脈形成に役立てたりして、さらなる経験へと繋げることができるかどうかが重要だ。

 

 ※高橋俊介(たかはししゅうすけ)氏

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授

東京大学工学部航空工学科卒業、日本国有鉄道勤務後、プリンストン大学院工学部修士課程修了。マッキンゼーアンドカンパニーを経て、ワイアット社(現在Towers Watson)に入社、1993年代表取締役社長に就任。その後独立し、ピープルファクターコンサルティング設立。20005月より20103月まで、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授、同大学SFC研究所キャリア・リソース・ラボラトリー(CRL)研究員。20119月より現職。 個人主導のキャリア開発や組織の人材育成の研究・コンサルティングに従事。

主な著書

『キャリアショック』(東洋新報社)、『プロフェッショナルの働き方』(PHPビジネス新書)、『自分らしいキャリアのつくり方』(PHP新書)、『キャリアをつくる9つの習慣』(プレジデント社)、 『スローキャリア』(PHP文庫)

 

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