シニアの働き方について

今後、労働人口の減少が予想されている日本経済の活力維持のために女性活用以上に変化が起こりそうなのがシニアの活用だ。

9月に入りトヨタ自動車は工場で働く社員約4万人を対象に、新たな人事制度を2016年1月に導入することで労働組合と合意したと発表があった。これまでの現役世代と格差があった再雇用制度を刷新し、定年退職後も65歳まで現役時代と同水準の処遇を維持するという画期的な制度だ。

今後、トヨタ本体の従業員の約6割が対象となる。新しい人事制度では定年退職者の再雇用制度「スキルド・パートナー(SP)」を見直す。一定の条件を満たせば現役時代と同じ処遇で働き続けられるコースを設ける。産業界では再雇用時に報酬が下がることが多いが、職位手当などを従来通り払うことで処遇を維持する。これはシニア社員にとって朗報だ。

 2014年に24%だったトヨタ社員の高年齢者(5064歳)比率は2025年に35%へ高まる見通しで、「実質的な定年延長」に踏み切り、問題となる総人件費増は生産性向上などで吸収するという。

今後の日本企業は労働力不足による競争力低下が懸念されており、その対策としては女性活用、外国労働力の活用とシニアの活性化が主な方法といわれている。

今回、国内最大級の従業員を抱えるトヨタがシニア人材活性化に動くことは、大企業の生産現場の働き方改革に影響を与えることになるだろう。実際に、年金の受給開始年齢の高齢化に伴い定年後も働く人は増えおり60歳以上の常用労働者は2014年で260万人強とここ5年で約3割増えたという。た

 一般的にシニア世代の働き方は大きく「①これまでの会社での継続雇用②他社への転職③独立起業」の3つの方法がある。この中で一番選びやすいのは①の継続雇用だろう。厚生労働省によると2014年6月時点で、過去1年に定年を迎えた人の8割超が継続雇用だった(60歳定年の場合)という。一方で労働政策研究・研修機構の調査によると、継続雇用後の年間給与は平均で定年到達時点の約7割に下がる。給与は下がるが仕事内容は「定年到達時点と同じ」が8割強を占めているという。

もちろん慣れた職場で収入を得られるのは魅力だが、モチベーションを維持することは意外に難しいようだ。現役時代は部下だった後輩世代からの指示にストレスを感じたり、責任範囲の縮小など仕事らしい仕事がないことに不満を持ったりする人は多い。

そういった意味で今回のトヨタの新人事制度は一つの打開策といえるが、女性の活用も欧米に遅れている課題だし、何よりもシニアの起業支援制度は実は企業の活性にもっともつながるのではないかと私は申し上げたい。近いうちに、シニア起業ブームが本格化する予感がしている。今後、機会があれば「シニア起業のススメ」について述べようと思う。

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